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相続に係る法改正のポイント

 2018年7月13日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律並びに法務局における遺言書の保管等に関する法律(改正相続法)が交付されました。
 高齢化の進展など社会情勢が変化する中、実情に合った改正を行うことで、相続をめぐる紛争を未然に防ぐという観点から、配偶者に先立たれた高齢者の生活に対する配慮や遺言の利用の促進といった見直しが行われています。
 この度、改正項目のひとつである、“自筆証書遺言の保管制度”が令和2年7月10日から開始されることことから、今回は、改正相続法のポイントについてまとめてみました。 
 

改正のポイントその1
配偶者の保護の拡大

 少子高齢化に伴い、配偶者と子を比較すると、相対的に配偶者の保護の必要性が高く、特に高齢の配偶者にとっては、住み慣れた住居に居住する権利を保護する必要が高いと言えるでしょう。
 そこで、改正相続法では、配偶者の居住に対する保護が拡大されるよう、以下の通り取扱いが改定されてました。

配偶者の居住権が新設されました

2020年(令和2年)4月1日施行

 高齢夫婦の二人暮らしでの夫が亡くなった場合、高齢の妻にとっては、いわゆる相続資産とは分けて、住み慣れた住居に居住する権利を保護する必要が高いといえるでしょう。
 しかし、実際は夫婦が同居居住する不動産があって、それが夫婦の共有名義であるとは限らず、夫(被相続人)名義であることも少なくありません。
 この時、妻が居住している不動産も相続財産として遺産分割の対象となり、妻の占有権原が必ずしも明確とはいえない場合があります。
 そこで、改正相続法では、配偶者に対し一定期間につき当該不動産の居住権(配偶者短期居住権)を認めるという、新たな権利を創設することで、相続時の妻の居住確保ができるようになりました。
 
 更に、妻が亡くなるまでの間は、無償で当該不動産に居住することができる法定の権利(配偶者居住権)も新設されました。
 この改正によって、仮に住み慣れた家を子どもが相続した場合であっても、残された妻は、居住権によって継続して住み慣れた住居に居住することが可能となり、妻の生活保障を図りつつ、遺産は子供に相続させるといった柔軟な遺産分割の選択肢の幅が広がりました。


②配偶者への自宅の生前贈与の一部が特別受益の対象となりました

2020年(令和2年)7月1日施行

 今回の法改正前は、長年夫婦で居住していた自宅について、夫が妻に自宅を生前贈与した場合、遺言で特別受益持戻しの免除の意思表示をしていない限りは、自宅の生前贈与が特別受益として取り扱われていました(民法

903条3項)。
 そこで、改正相続法では、結婚20年以上の配偶者に対する自宅の生前贈与については、特別受益の持戻し免除の意思表示があったものと推定されるとして、特別受益の取扱いを受けなくなりました(903条4項)。
 改正相続法によって、妻は夫から自宅の生前贈与を受けたとしても、特別受益として遺産分割のときに取得できる遺産が減少するといった不利益を受けなくなったことで、妻の保護の拡大が図られました。
 

特別受益とは?
 特別受益とは、相続人が被相続人から生前に贈与を受けていたり、相続開始後に遺贈を受けていたり特別に被相続人から利益を受けていること言います。
  特別受益を受けたものが共同相続人の中にいる場合に法定相続分通りに相続分を計算すると、不公平な相続になってしまうため、特別受益分も含めて相続があった(相続分を前渡しした)ものとみなし、相続分の計算を行うこととなります。


持戻し免除の意思表示とは?

 持戻し免除の意思表示とは、相続分の前渡しとしてではなく、遺産とは別に特定の相続人に特別の利益を与える趣旨で贈与・遺贈がなされたということを意味します。
 生前贈与や遺贈をその者の特別な取り分として与えようとする被相続人の意思を尊重するものです。

③配偶者が遺留分を請求されても住み慣れた家屋を手放さなくて済みます

2020年(令和2年)7月1日施行

 改正相続法では、これまでの遺留分減殺請求権から、遺留分侵害額請求権へと改め、これを行使することで発生する権利は金銭債権に限定されました。
 これによって、遺留分の権利者が土地や家屋に対して、遺留分侵害額請求権を行使しても、自宅を売却することなく、金銭によって請求分を支払うこととなり、妻は自宅に住み続けることが可能となります。
 また、遺留分の権利者にとっても、土地家屋の登記や売却といった面倒な手間がかからずに、相当額の相続を受けることができるため、双方にメリットがあると考えられます。

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改正のポイントその2
遺言の利用促進(利便性の向上)へ

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