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自筆証書遺言保管制度、公証証書遺言、秘密証書遺言の違い

 2018年7月13日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律並びに法務局における遺言書の保管等に関する法律(改正相続法)が交付されました。
 高齢化の進展など社会情勢が変化する中、実情に合った改正を行うことで、相続をめぐる紛争を未然に防ぐという観点から、配偶者に先立たれた高齢者の生活に対する配慮や遺言の利用の促進といった見直しが行われています。
 この度、改正項目のひとつである、“自筆証書遺言の保管制度”が令和2年7月10日から開始されることことから、今回は、➀自筆証書遺言保管制度、②公証証書遺言、③秘密証書遺言の違いについてまとめてみました。 

一言で評価しますと。。。

①自筆証書遺言保管制度
 手間が掛かり面倒ですが、形式的に有効性のある遺言書を安価に作成できます。

②公証証書遺言
 時間とお金は掛かりますが、形式・内容ともに確実な遺言書が作成できます。  

③秘密証書遺言
 簡単に比較的安価に遺言書を作成できますが、有効性が心配されます。

 詳細は、以下をご覧ください。

自筆証書遺言保管制度
②公証証書遺言
③秘密証書遺言
比較表

自筆証書遺言
(保管制度)
②公証証書遺言制度③秘密証書遺言
⒈遺言書の作成
⒉遺言書の様式
⒊手続きの手間
⒋手続で窓口へ
出向く回数
⒌遺言書の保管と
管理の方法
×
⒍遺言書の照会と閲覧
⒎遺言書の通知
⒏遺言書の撤回考え方
次第
考え方
次第
考え方
次第
⒐検認×
⒑遺言書の有効性×
⒒費用

⒈遺言書の作成

自筆証書遺言保管制度 △

 遺言者自ら(手書き)作成しなければならないので相当な手間がかかります。また、自書できない人は、法務局における遺言書の保管制度を利用することができません。
 ※財産目録はワープロ可

 遺言書の書き方に明るくない方の場合、意図した通りの効果が生じないことや遺言書自体が無効となってしまう恐れがあります。
 ※内容を専門家に確認してもらうことは可

②公証証書遺言 ◎

 遺言者の遺志に沿って公証人が作成した遺言書を確認するだけです。

 第1回目に公証人は、遺言者の希望する遺言の内容を聞き取り、その内容に基づいた公正証書の条項を作成。第2回目に確認を行います。
 ※専門家等が遺言者の希望する遺言の内容を公証人に伝え、予め公証人に公正証書の条項を作成する場合、公証人は、第1回目で予め作成した公正証書の条項が、遺言者の希望する内容なのか「読み聞かせ」たり「閲覧させ」たりと、十分に内容を確認した上で、公正証書遺言を作成することとなっています。

③秘密証書遺言 ◎

 遺言者の自筆の署名と押印がなされていれば、他の内容は、手書き、パソコン、代筆でも可能です。押印の際の印鑑は、認印の使用も可能です。
 遺言書を書いたら、そのまま封筒に入れて封をします。その後、遺言書に利用した印鑑と同様のもので封に押印します。
 ※この印鑑が遺言書に押印したものと異なった場合、遺言が無効となってしまうため注意が必要です。

 公証人が遺言書を提出した日付と遺言を書いた人の申述を封紙に記入。その封紙に遺言を書いた人と2人の証人が署名押印し完成。

⒉遺言書の様式

自筆証書遺言保管制度 △

 遺言書は、封のされていない、法務省令で定める様式に従って作成します。

②公証証書遺言 ◎

 遺言者の遺志に沿って、公証人が作成した遺言書を確認するだけです。

③秘密証書遺言 〇

 決まった様式はありません。

⒊手続きの手間

自筆証書遺言保管制度 〇

 法務局(遺言書保管所)で指定された法務事務官が記載形式に不備がないか確認します。(内容の確認は行いません

 遺言書保管の申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所に、遺言者が自ら出頭して行わなければなりません。
 その際、申請人(遺言者)の本人確認書類が必要です。

 証人は不要です。

②公証証書遺言 △

 公証人役場の公証人が取り扱います。

 原則、どこの公証役場でも手続き可能です。
 ※手続きの代理人として専門家が携わることや、公証人による出張訪問も可能ですが費用が掛かります。

 証人が2人必要となります。
 ※専門家が証人を手配することも可能ですが費用が掛かります。

③秘密証書遺言 △

 公証人役場の公証人が遺言書の存在の事実のみを確認します。

 原則、どこの公証役場でも手続き可能です。
 ※手続きの代理人として専門家が携わることができますが費用が掛かります。

 証人が2人必要となります。
 ※専門家が証人を手配することも可能ですが費用が掛かります。

⒋手続で窓口へ出向く回数

自筆証書遺言保管制度 〇

 法務局への訪問回数は1回。
 ただし、記載形式に不備があれば再提出が必要。代理人による申請も認められていません。

②公証証書遺言 〇

 最低2回の訪問が必要。
 ※専門家が手続きを支援する場合は1回。
ただし、費用が掛かります。
 また、公証人による出張訪問も可能。

③秘密証書 〇

 公証役場への訪問回数は1回。
 記載内容の確認はありませんので、遺言の内容を秘密にできますが、有効性の確認がとれないため、不備となる可能性があります。

⒌遺言書の保管と管理の方法

自筆証書遺言保管制度 ◎

 遺言書保管官が、遺言書保管所の施設内において原本を保管するとともに、その画像情報等の遺言書に係る情報を150年間管理することとなります。

 遺言保管所で遺言書が保管されるので、遺言書が生前に発見され、遺言内容が相続人等に知られてしまったり、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿といったリスクを避けることができます。

②公証証書遺言 ◎

 公証役場で20年保管。
 ※実質的には、遺言者が亡くなるまでの間は保存されることになっています。

 公証人役場で遺言書が保管されるので、遺言書が生前に発見され、遺言内容が相続人等に知られてしまったり、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿といったリスクを避けることができます。

③秘密証書遺言 ×

 完成した秘密証書遺言は、遺言者自身で保管します。
 公証役場には遺言書を作成したという記録だけが残ります。

 遺言書の内容を秘密にすることができ、偽造や変造も避けられますが、その一方で、遺言書の管理は自身で行わなければならず、紛失する恐れがあります。

⒍遺言書の照会と閲覧

自筆証書遺言保管制度 〇

 遺言者の生存中は、遺言者以外の方は、遺言書の閲覧等を行うことはできません。
 死亡している特定の者について、自己(請求者)が相続人、受遺者(遺言によって遺産をもらい受ける人)等となっている遺言書(関係遺言書)が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができます。

②公証証書遺言 〇

 遺言者生存中は、遺言者以外の方は、遺言書の閲覧等を行うことはできません。
 死亡している特定の者について、自己が相続人、受遺者等となっている遺言書が公証役場に存否の照会・閲覧・謄本交付を請求することができます。

③秘密証書遺言 ―

 遺言者自身で保管するため、照会の必要性がありません。

⒎遺言書の通知

自筆証書遺言保管制度 〇

 令和3年度から、法務局(遺言書保管所)は、遺言者が死亡した際、予め登録しておいた推定相続人(1名)に死亡した旨の通知が届くこととなっています。
 また、法務局(遺言書保管所)は、遺言書情報証明書を交付し又は相続人等に遺言書の閲覧をさせたときは、速やかに、当該遺言書を保管している旨を遺言者の相続人、受遺者及び遺言執行者に通知します。

②公証証書遺言 △

 公証役場から特段の通知はありません。

③秘密証書遺言 △

 公証役場から特段の通知はありません。

⒏遺言書の撤回

自筆証書遺言保管制度

 容易に撤回可能。
 費用も掛かりません
 保管の申請が撤回されると、遺言書保管官は、遺言者に遺言書を返還するとともに遺言書に係る情報を消去します。

②公証証書遺言

 撤回するのに相当な手間がかかります。

 原本が公証役場に保管されているので遺言者本人が遺言を破棄しても撤回になりません。 また公証役場では本人だとしても原本を破棄してもらえないので、撤回する場合は新たに遺言書を作成し撤回するしかありません。
 ※自筆証書遺言等でも撤回可能ですが、遺言書の有効性が危惧されますので、新たに公正証書遺言を作成されることをお勧めします。

③秘密証書遺言

 撤回する場合は新たに遺言書を作成します。
 新たな遺言書をいずれの形式により作成されるかは、遺言者の方の判断となります。

⒐検認

自筆証書遺言保管制度 ◎

 必要ありません。

②公証証書遺言 ◎

 必要ありません。

③秘密証書遺言 ×

 必要です。
 遺言者が亡くなったあと、すぐに秘密証書遺言の中身を確認することはできず、遺言書の内容が法律で定められている方式で記載されているかどうか、家庭裁判所で検認を受けなければなりません。
検認には一定の期間(1ヶ月程度)を要します。

 

⒑遺言書の有効性

自筆証書遺言保管制度 〇

 申請時に遺言保管官が、遺言書が法務省令に定める様式に則っているかどうかを確認するので、様式不備によって、遺言が形式的に無効となることを避けることができる。

②公証証書遺言 ◎

 最終的には公証人が作成するため、形式的な内容はもちろん、遺言者の趣旨に沿った有効性のある遺言書となる。

③秘密証書遺言 ×

 秘密証書遺言を作成する場合、公証人はその内容を確認しませんので、遺言書の形式が違っていたり、内容が不明確などの不備があると、無効となってしまう場合があります。

 なお、自筆証書遺言の要件を満たしていれば自筆証書遺言として有効になりますが、自筆は手間がかかります。

⒒費用

自筆証書遺言保管制度 ◎

 比較的安価に実施可能です。
 参考を参照ください。

②公証証書遺言 △

 財産額に応じて、手数料が高くなります。
 更に専門家に手続きの代行を依頼した場合、その分の報酬費用も発生します。

 参考をご参照ください。

③秘密証書遺言 〇

 公証役場の手数料は一定額(11,000円)ですが、専門家に手続きの代行を依頼した場合、その分の報酬費用も発生します。
 参考をご参照ください。

<参考>
●自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧・遺言書保管所一覧・遺言書保管所管轄一覧(法務省ホームページ)
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00010.html
●公正証書遺言の手数料(日本公証人連合会ホームページ)
 http://www.koshonin.gr.jp/business/b01/q12

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