遺言者は、遺言によって5年間、遺産遺産分割の禁止をすることが可能です(民法第908条)。
このことを遺産分割の禁止といいます。
また、遺産分割をしない旨を相続人間の遺産分割協議で取り決めることもできます。こちらも禁止の期間は5年間ですが、その期間をさらに5年間延長することも可能です。
例えば、相続人が未成年の場合は、代理人を選任する必要が生じますが、相続人が成人するまでの間、遺産分割を禁止する旨を遺言に遺すことで、代理人を選任せずにその相続人の遺志に基づいた遺産分割が可能となります。
「成人して自身の判断で遺産分割協議に加わって欲しい」といった遺言者の想いがある場合に活用することができます。
次に「後に非嫡出子の存在が明らかになる」など、相続関係が複雑になり、やり直しが必要になる可能性がある場合、その内容が明らかになった後に協議できるよう、いったん遺産分割を禁止することで何度も協議を行わずに遺産を相続することができます。
ただ、このように揉めそうな案件は、後の相続人間の争いを未然に防止するためにも、できるだけ生前の内に整理をされておくことが望ましいでしょう。
「遺産分割の禁止」を行った場合、相続財産が共有状態のままになるため、相続人は財産を取得することができず財産が宙に浮いた状態が長期間続くこととなります。
さらに相続税が発生する場合、相続開始から10ヵ月以内に申告を行わないとさまざまな特例などの恩恵を受けられなくなります。
※「やむを得ない事情」がある場合には、申告期限後3年を経過する日の後に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出することで対応が可能です。
この手続きをしておけば遺産分割が完了した後に「配偶者の税額軽減」「小規模宅地等の特例」などの適用を受けることができますので、税理士に相談することをお勧めします。