相続の備えは、これまでに築き上げてきた財産を通して、ご家族やお世話になった方々へ、ご自身のお気持ちを伝えるとても大事な作業です。
そこで、実際に相続が発生した時に、思うように手続きが進まなかったり、思いもしなかった遺産の分割になってしまったりと、残されたご家族をはじめとする大切な方々に過度な負担がかからないようにすることが、何よりの備えだと思います。
ここで、不幸な例として私の祖父の事例を紹介いたします。
私の実家は、現在も亡祖父の名義のまま相続人の全容が掴めず、登記の名義も変えられない状態となってしまっています。
そのため、土地を売ることも出来ず、空き家を貸すことも出来ず、草取りと亡祖父名義で亡母宛てに届く納税通知により、税金を毎年納め続けています。
いや、「あなた行政書士なんだから、戸籍調べて相続人あたりなさいよ。」と、言われそうですよね。。
確かに戸籍を調べることは出来るんですが。。
時すでに遅く、調べると、数十人の相続人となってしまっており、もう全く見ず知らずの人ばかりなんです。
これを相続するとなると、相当な労力とお金がかかることになってしまい、やむなく税金だけを支払い続けている状態となってしまっているのです。
じいちゃんが遺言を遺していてくれたらと、遺言の必要性を実感しているところです。
こんなことにならないように、都度々々の相続が大切なんです。
最近では、国においても裁判の判例であったり、法律の改正から遺産や遺産を相続する配偶者の保護、また、活用しやすい遺言に関する取扱いの見直し等に力が注がれています。
一方、金融機関では、厳密な手続の設定がなされたことで、相当な手間が発生することとなり、葬儀の費用の支払い等で預貯金の払戻しを行う際にも、相当苦慮するようなことも散見されております。
そこで、今回、相続に備えるために必要な視点となる、三つのポイントと遺言の必要性の検討について、ご紹介させていただき、ご家族等が末永く安心して暮らしていけるようご案内をさせていただくこととしました。
制度や法律については、簡単に理解しにくい部分もあることから、どうしても先延ばししてしまうことが多い相続への備えですが、この機会に一度じっくりと考えいただれば、幸いです。
・まずは、ご自身の財産がどれくらいあるかを把握しておきましょう
被相続人に万が一のことがあって、いざ家族が遺産の額を把握しようとしたら、何が何やら全くわからないということは、よくある話です。
付き合いなどで、複数の金融機関での通帳や、同じ銀行であっても複数の支店の通帳をお持ちの方は多いのではと思います。
また、最近はネットバンキングやネット証券で、スマホの中だけで決済されるような金融資産もあります。遺産分割をした後に、通知書が届き通帳の存在が発覚、遺産分割協議をやり直しという事態もあり得ます。
家族が困らないようにするためには、いちど通帳の整理を行い、できるだけ一つの金融機関に取りまとめてしまいましょう。
また、ネットバンキングなども含めて、予め財産目録を作成しておかれると、いざという時の家族の労力はかなり軽減されます。
なお、通帳等の整理に際しては、金融機関ごとに預金保証額の限度(1,000万円)がありますので、その点はご留意ください。
・金融資産(預貯金・現金)
金融機関毎の通帳の記帳、残高の把握
・不動産
固定資産税評価額や登記簿と路線価により確認
・生命保険
保険証券により確認
・投資信託・株式
評価額の確認
前述したとおり、相続人への公平性の観点から、良くも悪くも金融機関は、簡単に預貯金の解約には応じなくなりました。
そこで、葬儀やお墓の費用については、あらかじめ必要となる金額を見積り、それに相当する額を遺産から直ぐに活用できる(引き出せる)よう、準備をしておくと安心です。
必要となるお金を準備(保管)しておく手段としては、現金で持っておくという方法もありますが、それは物騒ですので、金融機関へ預貯金として預け、遺言書に祭祀主催者を指定しておくことをお勧めします。
または、相当額を祭祀主催者となる方へ生前贈与しておく等の方法が考えられます。
※金融機関によっては、それでも相続人全員の同意(遺産分割協議書の提示)を求めてくるところもあります。平成27年の民法改正によって、法定相続分の1/2(限度額150万円)までは、相続人全ての同意を得られなくても、仮払いができることとなりました。もし、遺産の金額がそれなりに高額となる方であるならば、銀行口座に余裕資産を多めに預けていただければ、150万円までは仮払いに応じてもらえることとなります(それでも金融機関によっては、相続人の全員の戸籍を求めてくるかもしれませんが)。
大切なご家族やお世話になった方々が、円満に相続できるように、遺産分割の方向性を検討しましょう。
法定相続人となる、ご自身の親族を書き出してみましょう。
法定相続人となる順位は、子ども(1位)、親(2位)、兄弟姉妹(3位)、配偶者(必ず相続人)と、なっています。
法定相続の割合の詳細は、こちらをご覧ください
☞遺言の効果②相続分の指定
ポイント①で整理した資産から、ポイント②で予想するお金を差し引き、残った資産が相続される予定の資産となります。
ポイント① - ポイント② =
相続予定の資産
ここで、法定相続の割合とあなたが考えていた遺産の分割額とが合致しているかを確認。
合致しないならば、遺言書により、分割額を指定することが必要です。
また、合致していても、例えば不動産は妻に渡したいとか、分割する内容を指定する場合も、遺言による指定が必要となってきます。
なお、遺言書を遺す必要がある場合は、どのような方法で、遺言書を作成するのかを検討することとなります。
遺言書を遺す必要があるか否かについては、次の資料で説明いたします。
次の資料はこちらをご覧ください。
☞遺言が必要な理由とは