「期限の利益」とは、期限が付されていることによって当事者が受ける利益のことを意味しますが、一般的には、一括払いではなく分割払いが認められていることによる債務者のメリットを意味します。たとえば、100万円を来月末に一括払いしなければならない場合と、来月末から毎月月末に10万円ずつ10回払いすればよい場合とでは、後者のほうが資金繰りに余裕ができます。この分割払いにより得られる利益のことを法律用語では「期限の利益」と呼んでいます。
期限の利益を設ける場合には「その支払いを怠り、通知による請求がなされても支払わない場合」などには期限の利益を喪失する内容の規定をあわせて設けることが多く見られます。たとえば、毎月10万円の支払いが滞った場合に、「督促の通知がなされたにもかかわらず期限内に支払わなかったときには、残金一括払いとなる」という規定です。こうした規定のことを、期限の利益を喪失させる規定であることから、 「期限の利益喪失規定」などと呼んでいます。
このように「催促の通知がなされたにもかかわらず期限内に債務者が支払わなかったこと」が期限の利益の喪失条件だったとすると、後にこの通知がなされたのか否かが争いになることは容易に想像できます。契約解除の場合と同様に、この場合にも期限の利益を喪失させる通知を送ったことの立証責任は、債権者にあると考えられています。そのため、債権者が催促の通知を内容証明で送っていなかった場合に、債務者に「そんな通知は受け取っていませんよ」などと反論されてしまうと、債権者は非常に苦しい立場に陥ることになりかねません。こうした事態を防ぐために、期限の利益を喪失させる条件としての通知は、内容証明によって行うべきでしょう。
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